とある商社マンの日常

商社マン6年生のtitorが会社員生活を綴る

面接当日

あらすじ

商社の面接を受けるため、父タケシに相談した倫太郎。結果的にアドバイスと精神的な安定の両方をもらい、面接に挑む。

 

2012.7. 24 面接当日

萎える暑さの中、スーツに白シャツ、紺色ネクタイと無難な服装で駅に向かって歩く。

正直不安しかない。

 

用意したこと以外のことを聞かれたら…

圧迫面接だったら…

実は面接官が複数いたら…

発言すべてにダメ出しされたら…

自己否定されたら…

 

自分でいうのもなんだが、俺は自信家だ。

だか、特に根拠はない。

分かっているし、変えたいとも思う。

スポーツや夢、目標に向かい日々努力し、何かを掴み取った人間に対して常に憧れてきた。

そういう成功体験の書籍をいつも読んでは、やる気になった。でも俺にはできなかった。

 

こんな回想している間に12分かかる駅についた。電車の中では今日話すことを復習すると決めている。でも何をしていても不安は常に頭のどこかに渦巻いた。

 

(なぜこんなにも不安になのか。今就職する努力をしないとおそらくこの先、妥協して生きていくことになるとなんとなく気付いていたから。それが一番怖かった。あと周りからの目も…。最近就職活動を始めて、大袈裟なと思うかもしれない。大して努力せずに結果が伴わなくて当たり前と思うかもしれない。それでも目の前のチャンスをものにしたかった。職種は関係ない。採用されたらとにかく頑張る。それしかアピールできないと思っていた。)

 

こんなことばかり考えていても拉致があかない。今日やるべきことに集中することにした。

 

<今日面接で何を意識するべきか>

●何がなんでも働きたい意思を示す

●学生時代に取り組んだこと具体的にアピール

●質問に対して履歴書にそって答える

●あとはしっかり会話することを意識する

 

面接室に呼ばれてからの流れを本をみて復習した。そのあとは履歴書に目を通し、面接官に付け込まれる穴がないかもう一度目を通した。

 

1時間かかる道のりが5分のように感じ。

あっという間に面接会場の前に30分前に到着した。(完全に早すぎた…)

近くの公園を散歩しながら、今度は気持ちを明るくしようと今日の面接の妄想を始める。

 

「君の履歴書はしっかりしてるね!」

(当たり前だ、誰だと思っているこの私を!)

「いえ、一生懸命書きましたが、まだ未熟者で…今日はよろしくお願いします!」

(控えめな私、ステキでしょ(°▽°) ?)

「そういえば、こないだの試験が終わって机と椅子を綺麗にしてくれた子だよね?」

「覚えてて下さり恐縮です。ありがとうございます。」

(はい、合格!)

 

いつも気分が下がりそうなときは、こんな妄想で自分を元気にする。こんな妄想面接を何パターンも繰り返すうちに15分前。

急いで会場前に戻った。

(倫太郎、いざ参る!)

 

「こんにちは!本日15時より面接で参りました岡部と申します。よろしくお願い致します。」

思い描いた会社の雰囲気とは違っていた。

フロアーはビルの一室で、めっちゃ静か。

そこに全ての社員がパソコンをカチカチ、まるで図書館のようだった。

あっけにとられていると、会議室にお呼ばれした。

 

「どうぞ、お入りになってお待ちください。」

美形のお姉様が会議室に案内してくれた。

座ってお待ちくださいと言われたから座って待つ。シュミレーションと全く違う。ドアを開け閉めしないことにホッとした。

五分ほど待機している間、持ち込んだ履歴書などを用意して、大人しく待った。

 

コンコンコンとノックが静かな部屋に響き渡る。

「おーお待たせ。こないだ帰りにちょっと話した子ね!テスト無事通過したか!今日はよろしく!」

意外にも陽気な感じだった。

見た目は50代後半、背丈は165cmくらい。

人柄の良さそうで白髪混じりのできるサラリーマン風の七三分け。ホテルマンのような印象のおじさんだった。名前は金田さん。

 

容姿からどんな人が考えながら返事をする。

「いや、運が良かっただけだと思います、英語には自信がありましたが…他はダメダメで」

「おー確か英語満点だったらしいぞ!国語は酷かったみたいだけど。」

「日本語も入社までに勉強しておきます…」

「とりあえず、面接という形だけど、今日は君という人間が知りたいと思う。普段通りに会話をしてほしい」

(タメ口でもいいですかと言いたいがグッとこらえた。)

金田さんは続ける。

「お父さんは何してる人?」

「父ですか?父は自動車会社で品質保証を担当しているみたいです。」

「お母さんは?」

「母は、花屋さんで経理のパートをしています。最初は普通のパートだったみたいですけど。簿記2級を持ってて、小さな会社で伝票処理とかできる人が少ないので特別に採用されてるみたいです。」

「お母さんウチにほしいな(笑)兄弟はいるの?」

「兄弟は妹がいます!4つ下で、今大学生です。」

(中々自分のことが聞かれない…)

 

金田さんから今の質問の意図についての説明があった。

 

「最近さ、家族のことも答えられない子が多いのよ。一番近くの人とコミニュケーションが取れてるか?こういう質問したらわかるんだよね。君はしっかり家族と話せてるみたいね。

今後営業をやってもらう人を雇いたいんだけど、身近な人とコミニュケーション取れない人って、お客さんの気持ちわかんないと思うから。」

ベテラン感のある金田さんの説明に納得しながら、いや働く意思のある本人のことは聞かないのか?とツッコミたくなったが、すかさず次の質問がくる。

 

「で、うちの会社で何やりたい?食品か化学品か、経理か、俺の部下か」

(やっと面接らしい質問…正直に答えよう)

「配属されたところで、がむしゃらに頑張りたいと思いますので、特に希望は言いませんが、強いて言えば食品がやりたいです!イメージしやすいですし、自分が売った原料が店頭に並ぶと実感も持てる気がします。」

(俺の部下はあっさりスルーしてしまった…)

「いい答えだね。みんな小難しいこと言ってくるから、マーケティングがどうとか、TPPを見据えたこうしたいとか。君のが一番本音でいいわ」

「ありがとうございます!」

「次いつこれる?」

「合格したらですか?いつでも大丈夫です!」

「たぶん来月末になると思うけどいい?」

「わかった、食品部希望だと伝えとくよ、君合格ね!そのうち案内行くと思うから待ってて。他に行くなよ(笑)」

「絶対行きません!」

 

正味15分くらいの面接が上出来なほどうまく終わった。お酒の話はなかったけど、半分親父の言った通りで、心の中で深く感謝した。

働きたい気持ちだけは強く持とうと再度心に決めて帰宅した。

 

 

次回 二次面接